Ordinary Days > 2014/04/01:A:2014/04/01
From:当麻
To:征士
Subject:今、蛙とチュウ
あと10分くらいかかる

 午前0時を回ってすぐに送られて来たメールは、当麻からの『帰るコール』である……多分
 タイトルが盛大に誤字なのは今日がすでに四月一日だからなのか、連日の年度末進行で誤変換に気付く余裕も無いほど疲弊し切っているのか……あるいは、当麻の事なのでひょっとすると本当にどこかのカエルにキスをしている可能性も否定出来ない。

 いやいやいや、ないだろう。ない。否、あってくれてはこまる。蛙とはいえ浮気はいかん。
 金の鞠だったか……童話の故事では蛙に接吻すると呪いが解けて王子に戻ってしまったりするのだから、どこかで王冠をかぶった巨大な蛙などを見つけたら、当麻は興味本位で近寄って行くに決まっているのだ、絶対。

 スマートフォンからのフリック入力には未だに慣れないので、PCのメーラーから当麻のスマホに宛てて返信を作成した。
From:征士
To:当麻
Subject:考え直せ
奴等は致死カビを持っているし甲斐性もないぞ。
考え直せ

From:当麻
To:征士
Subject:ハァ?
どっかへの誤爆?意味わかんないんだけど?
あと3分


 間髪を入れず返って来たメールからは、どうやら最初のメールが純粋な誤変換である事が窺い知れる。

 ほっと胸を撫で下ろし、こちらも誤爆という事にして取り消しのメールを入れるべきかと考えていると、外廊下を歩く足音がして、メールを送るまでもなく待ち人が帰って来た事が知れた。
 ガチャガチャと乱暴に鍵を回す音がして、スチールの扉が開き切る前に廊下に飛び出した。
「ただいまぁー」
 深夜である事を考慮してか小さめの声は、もふもふとくぐもっている。
 それもその筈で……当麻の前にはいやにリアルで巨大なアマガエルのぬいぐるみがいるのだ。
「と、当麻!?カエルも浮気に入るからな!?」
「あー?……あ、チュウの話?えー、チュウならもうしたけどカエル無罪だろー」
「無罪になる要素がない。うちでは飼えないから捨てて来なさい」
 みたところ背中は緑色と茶色、お腹は淡い黄色のボア地で作られたカエルは餌も水も必要なさそうではあるが……
「せっかくもらったんだから捨てねーよ。こいつ、こう見えて高級品なんだから」
 背中から手が入る構造のパペットになっているのか、カエルの口がぱかっと空いたかと思うと、口……ではなく、腹についたスピーカーのあたりかケロというかビヨーというか、電子ブザーの音が流れ、口の開け閉めに従って大層不安になる音程の音が流れた。
「カエル型テルミンのケロミンちゃんだ!送別会ビンゴでもらった奴が持て余すっていうから、もらって来た。……ちゃんと面倒見るから、飼ってもいいだろ?」

 カエルの横から顔を覗かせて、計算し尽くした上目遣いでねだられると……弱い。100%計算だとわかっていても弱いのだ。
「……カエル無罪は適用されないから、ちゅうは駄目だ。その条件を飲めるなら、お前の部屋に居候させてもいいだろう」
「やったー!ありがとー!」
「だから、カエルのキスはいらん!」
「カエルとチュウって書いてあって焦った?」
「あれは故意なのか!?」
「そーれーもこい、あれもこいー♪さて、どーでしょねー?」
 カエルと当麻の怪しい音程の合唱で、昭和歌謡のようなそうでもないような鼻歌をうたいながらリビング向かう背中を、こめかみを押さえながら追いかけた。あのケロミンとやらは……電池を抜けば大人しくなるのだろうか?

2014/04/01 アップロード